富士山② ~無計画だからこそ~

元気かな?
高山をおちょくっていた僕たちは確かに無謀だったんだけど、でもだからこそ得られたものもあるんだ。
その日の朝は天気が良すぎて、頂上から見た日の出は絵にも描けない美しさだった。僕たちは何も調べずにただ「日本一の富士山頂から日の出を見てやろう」としか思っていなかったから、それが美しいものだとはこれっぽっちも知らなかった。だからあの時に僕たちが感じた美しさは知識のフィルターごしの美しさではなくて、全身全霊で感じた美しさだったと思う。しかも、マッチ売りの少女のように凍えまくって絶望感に負けそうだった後に思いがけなく出会った美しさだったから、眼だけが思った美しさではなくて、魂が感じた美しさだったと思う。 

テレビや書物で知った「美しいらしい」というものを確認する行為ではなくて、すべて頭空っぽで行動したからこそ、本当に美しいものに共鳴できたんだと思っている。

今もしょっちゅうそう思うけど、当時もラッキーボーイだったんだなあってあらためて思ったよ。