夜這い ~入院日記~

元気かな?傷跡の見た目はえぐいけど、痛むことは随分と減ってきているよ。

 

夜の3時くらいだったかな。仕切りのカーテンが勢いよく開いたので目を覚ました。隣のベットのおじいちゃんが僕のスペースに入ってこようとして、目が合った。そのおじいちゃんは「間違いました。すみません。すみません」と謝りながら自分のベットに戻っていった。トイレからの帰りだったらしい。僕は夜這いをしたことはないけど、されたこともなかったし、自由自在に身動きが取れる状態ではないので、一瞬身構えたよ。

そのおじいちゃんは翌朝、今度は意図的に僕のスペースに入ってきて、「昨日はごめんなさい」と言ってきた。僕はおもしろい経験ができたのでラッキーと思っているくらいで、まったく怒っていないし、気にしていない。

漏れ聞こえてくる会話から、そのおじいちゃんは体のどこかの放射線治療をしているようだ。悲壮感を感じさせることもなく、看護師さんと明るく話をしている。明るく振舞っているのか、そういう性格の人なのかわからないが、立派だなと思う。隣に寝ていて勉強になるよ。