体の記憶①

元気かな?風が強くてちょっと冷んやりした日だったよ。桜がまだがんばって咲いてくれていたので、今日もいっぱい穏やかな気分にしてもらったよ。

今日のお話は「イナゴかわいい首筋に張り付き事件」に関連する内容。あの大パニックがきっかけで僕は虫が怖くなって、自らは近寄っていくことはなくなったんだけど、でも怖さといっても「わー、虫だ」っていう程度だった。嫌っていうよりも明確に好きではないという感じだった。

イナゴ事件以来、僕は虫たちと適度な距離を保ちながら日々を過ごせていた。しかし・・・。19歳の夏、枝打ちをしていた時に新たな阿鼻叫喚の瞬間が訪れた。蜂の巣をつついてしまったんだろうね。ぶーんという音が急に大きくなって、何かな?とじっくり思う間もなく4匹の蜂に顔と頭を刺された。幸いにも小型のアシナガバチだったらしくて、診療所で数時間寝ていたらすぐに復活できた。虫はすでに苦手だったのでその感情が変わったわけではない。蜂にとりわけ恐怖感を抱いたという憶えもなかった。そしてしばらく時が過ぎていった。

ところが。何年か経ってたまたま目の前に蜂が現れた時、ほんの一瞬だけど体が硬直して必要以上に避けようとする自分に気付いた。それは偶然ではなくて、それから蜂が視界に入ると必ず無意識に身構えてしまうようになっていた。滅多なことでは刺しにこないことは十分にわかっているのに、体が勝手に反応してしまう。体が勝手に怖れているんだね。

体自体も記憶するんだね。頭でしっかりと認識できない分だけ、体に刻まれた記憶のほうが強烈なのかもしれないね。顕在化していないだけで実はもっともっとたくさんのことを体は記憶してきたし、これからもしていくんだろうね。どうせならいい記憶、心地いい記憶をたくさん憶えさせて、心だけでなく体中までがうれしくて仕方ないような生き方をしていけたらいいな。